西洋ファンタジーの一般的なイメージや、これまでのDQナンバリングと違い、古来日本のような文化圏を築いているアストルティア世界のエルフ。DQ10としての独自性や特徴づくりという意味合いだけではないのでは?というのが今回の話です。
なお、他の考察にも言えることですが、製作者側が明言しない限り“正解”“模範解答”といったものは存在しません。自分でプレイしていて浮かんだ謎や疑問に対して、私は私なりの答案用紙を仕上げ、提示しているのに過ぎません。とどのつまり、仮にどれほどもっともらしく見えたとしてもこれが「正しい」とは限らんよ、ということです。
以下、リンジャクエスト(失われた時を求めて)最終話まで、および神話編のネタバレを含みます。
真リンジャの塔でヒストリカから依頼される一連のクエストにおいて、主人公は偽リンジャ側で『五行の塔』という場所に訪れることになります。先にこちらの考察で触れたように、偽レンダーシアは『偽』と名がつきながらも、“本当にあった過去の歴史、思い出”といった側面があることを念頭においていただきたいと思います。
五行の塔という名前の『五行』とは、万物はすべて5つの要素からできていて、このバランスを保つことで世界が成り立っているとする、元をたどれば中国起源の思想です。ここはDQではなくリアル世界でのお話。
そこに陰陽思想(陽と陰…ありていにいえば光と闇です。万物は陽と陰どちらかに分類され、そのどちらかに偏るのではなく陰陽の調和が世界を保つという思想)を組み込んで陰陽五行思想とし、さらに道教や密教などを取り入れてできあがったのが日本独自の陰陽道です。
さて、話を戻してリンジャの五行の塔。ここに行くためにはキーを起動させて道をつなぐ必要がありますが、このキーの色はすべて五種族のストーリーで得られるキーエンブレムの色と共通しています。そして、五行説には「五色」というものがあり、起動キーにもこの五色が使われているのですね。
この共通点から、オーガ・ウェディ・エルフ・プクリポ・ドワーフといった五種族の出自は種族ごとの耐性や「~の民」という名からわかる西洋の四代元素(地水火風)+光闇だけではなく、東洋の五行…火・水・木・金・土が元なのではないか?と私は考えました。
四大元素と五行とキーエンブレム、そして種族の対応は下記のとおり。
風 →木→エルフ→緑
火 →火→オーガ→赤・黒
地(闇)→土→ドワーフ→黄
光 →金→プクリポ→白
水 →水→ウェディ→青
なお、特筆すべきこととしては、
●五行の塔の起動キーには緑(エルフの色)がなく、赤と黒(どちらもオーガの色/王が2人存在する種族)が使われている
●各塔にいるボスのドロップアイテムはアイ系宝石だが、こちらもグリーン(エルフの色)がなく、かわりにイエロー(ドワーフの色)が2つある
●各塔は円形に配置されており、若干いびつな一筆書きの☆を描くことができる(一筆書きの星はセーマン…陰陽道のシンボルマークでもあります)
●その円と星を組み合わせた図形の中心に「禁呪の祭壇」がある
●真レンダーシア側の五行の塔には、宝箱としてブルーオーブ、レッドオーブ、パープルオーブ、イエローオーブ、そしてせいれいせきが配置されている
●世界地図を見ると、まるでこの配置に倣うように五種族の住む大陸が円を描いて並び、その中心に「人間の住むレンダーシアとエテーネ」がある
以上をもとに考えて、アストルティアの世界観と種族そのものに五行説…というか、陰陽道が関わっていそうだという推測に至ったわけですが…。
この陰陽道に関して、またリアル世界のほうの話です。日本で陰陽道が形をととのえ、伝説に残る陰陽師かつ当時の為政者に重用された阿倍晴明が活躍したのは平安時代。それと前後して、平城京から長岡京を経て平安京に遷都した、という歴史があります。710・なんと立派な平城京、794・鳴くよウグイス平安京、という語呂合わせが有名ですね。
神話クエの過程で、現在のカミハルムイ(神/春/無為)は遷都された新しい都で、もともとは捨てられた城が都だったということが明らかになっています。はて、どこかで聞いた話だと思いませんか。
そしてもうひとつ。陰陽道には泰山府君祭というものがあり、これは陰陽道を扱った物語では主に死者蘇生、反魂の術(多くは禁忌)として扱われます。現実での伝承では死の間際にある者の命を救ったり、為政者などの健康長寿を祈祷する祭祀です。死者蘇生…やっぱりどこかで聞いた話ですね。
また、話はそれますが、竜/龍(ドラゴン)の西洋と東洋の扱いの差についても触れておきます。ファンタジーや民話などにおいて、西洋では竜は悪役である場合がほとんどです。一方、東洋では畏怖の対象でもありますが、竜神(龍神)という言葉があることからもわかるように、崇める神様にもなりうるものです。
DQ1でのドラゴンは完全に西洋のとらえ方を踏襲しており悪役であるわけですが、その後(正確には竜王のひ孫が勇者への協力者になる2、あるいは竜の女王が現れる3から、明快に神として描かれるのは4以降から)東洋のドラゴンのとらえ方にシフトしていっています。ここはおそらく和製RPGのDQならではの東西の融合であり、このときから既に「和」の要素が含まれてきていたわけです。
閑話休題。10のストーリーと世界観の根底に陰陽五行思想の流れがあるのであれば、それを担うための下地となる文化が必要になってくると思います。その文化は日本のものをなぞればいい(陰陽道を担ったのがまさしく日本ですからね)。DQで死者蘇生といえば世界樹…そして、歴代ナンバリングタイトルでこれまでその世界樹に深く関わってきた種族といえば? …そう、エルフです。
こういった連想から、エルフが和風になったのではないか?と考えたのですが…もしかしたら、DQ世界における日本=DQ3のジパングがアストルティア世界の成立に関わっているというのもあるかも?
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DQ10では見た目6主の「ソール」というキャラをメインにまったりプレイ中。
DQ10発売とほぼ同時期にサイト関連のファイルやメール合切の入ったPCが故障してしまい、ついったで細々呟いたりごくたまーにイベント参加するだけになった経緯があります。
ついったアカウントはこちら→ https://twitter.com/yusorak